そばの実をかじり、味と香りを確認し、石臼で挽く…これが私の日課です。「そばの実」の素材に触れ、自然の豊かさを実感しています。
「そばそのままの美味しさを引き出す」ということへの追求、これがそば作りの姿勢だと思います。
江戸時代から残るそば職人たちの口伝などを参考にしながら、できることを取り入れ、そばの実そのものの持つ美味しさを伝えられるよう、日々努力して参ります。
久木野庵のそばってどんなそば?
そばの実を石臼で挽いて、そばの実の甘皮(種皮)まで全部挽き込んだ色の濃いそば粉を作ります。 基本は、二八そば(小麦粉2そば粉8)を提供しています。新そばの季節には、期間限定でそば粉十割の生粉打ち(きこうち)そばも提供しています。どちらも硬めに細打ちにしています。
細くて香りが良いので、そばつゆはそばの下の方に少しだけつけてお召し上がりください。
瑞々しく細打ちのそばですので、そばつゆは濃くてそばに絡んでくるように作っています。
辛口にしているのは、そばの甘さを感じてほしいからです。
そばの実の中身は?
そばの実の構成は、そばの実の芯部からの胚芽16%、胚乳53%、種皮(甘皮)12%、果皮(鬼皮)19%となっています。そばの実は実の良否、そば粉の粒度分布、甘皮をどのくらい残すかなど、その美味しさを決める要素はいろいろあります。
さらに、水回し、延ばして切る、茹でる、盛り付け、とそばがお客様の手元に届くまで手を抜けない仕事がたくさんあります。
毎朝手打ちしています
久木野庵では、久木野産の久木野在来種をはじめ、国内産の良質のそばの実を、電動石臼と手挽きの石臼で前日までに細引きと粗挽きに自家製粉し、時期によっては甘皮を70%ほど取り除いて、毎朝手打ちしています。
のどごし良く、甘くて美味しいそばに仕上げるためです。
どんなそばつゆを作ってるの?
【素材】
水:南阿蘇外輪山の伏流水
昆布:ラウス昆布
干ししいたけ:南阿蘇産天然しいたけ
鰹節:荒節(厚削り)
鯖節:荒節(厚削り)枯節(厚削り)
返し:しょうゆ、みりん、砂糖でつくる そばつゆの素
素材の旨味を引き出すように出汁をひいています。出汁と返しを調合したものを火にかけて味を合わせます。1日寝かせて、返しで味を整え、そばの甘さを感じることができるように、辛くてしょうゆの重たさを持ったそばつゆを作っています。
そば通の心得
蕎麦職人からの口伝(蕎麦つゆ編)
一、蕎麦粉の割合が多いほど、濃い当たりの強いつゆ。
一、蕎麦の色が濃いほど当たりは強く、白いほど穏やかに。
一、蕎麦が細いほどつゆは濃く、太いほど薄い。
一、割り粉が増えるにしたがって、つゆは薄く穏やかに。
一、蕎麦の茹でたではつゆを濃く、出前は穏やかに。
「蕎麦が変われば、つゆも変わる。」
蕎麦つゆの濃さは、六倍の蕎麦湯で薄めて「お吸い物の味」が基本。
美味しいそばの食べ方
久木野庵のそばつゆは辛口です。
美味しく召し上がっていただくための食べ方をご紹介します。
一、はじめに、そばつゆの甘さ・辛さを確認し、そばつゆの付け加減を決めます。
二、まずは何も付けず、そばを奥歯で噛んで味わってみましょう。
三、とっくりのそばつゆを1㎝ほど猪口に入れて、そばつゆとそばの味を味わいます。
四、そばとそばつゆの付け加減は、そばの下から1/4くらいの部分をそばつゆに付けるのがおすすめです。
五、薬味の辛味大根とネギは猪口に入れず口直しに味わうと、そばの味がその都度フレッシュになります。薬味を入れる時は少しずつ小分けに入れてください。
六、そばにそばつゆを半分以上付けずに召し上がってみてください。そうすればそばの風味を感じることができます。
七、猪口のそばつゆが少なくなったり味が薄くなったりしたら、とっくりのそばつゆを深さ1㎝ほどまで入れます。
八、そば猪口は小さいです。手にとって、そこへそばをつけてください。
九、そば猪口の中はそっと扱い、かき混ぜすぎない方がベターです。のどごしの良いそばの風味をお楽しみください。
最後に、そば湯がテーブルに届きましたら、猪口に残ったそばつゆを5倍から7倍を目安に薄めてお吸い物くらいの濃さに整えてください。これまで重たいしょうゆに隠れていた出汁が姿を現します。そばつゆの丸い印象は崩れないはずです。
以上、久木野庵の美味しい手打ちそばの食べ方のご案内でした。
真心をこめてお作りいたします。